日本映画「未来予想図 〜ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜」が10月6日からロードショー公開される。
映画のタイトルからもわかるようにこの映画は、日本の音楽バンド、Dreams Come Trueと大いに関係がある。Dreams Come Trueのラブバラード「未来予想図」「未来予想図II」の曲の世界観を映画化したものだ。歌詞も楽曲も心に沁みる切なくて温かいラブバラードだから、その世界を映像で表現しているとなると相当楽しみだ。
音楽では、ヘルメットをこつこつと5回ぶつけたり、車のライトを5回点滅させることが「ア・イ・シ・テ・ル」のサイン。恋人同士は、お互いの思いをやりとりするサインがあって、それをうまく歌詞にしている。そこが温かくもあり、切なくもある。
僕もつきあった女の子といろんな「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」を作ってきた。今でも懐かしく切なく思い出すのは中学3年生のときのことだ。好きな女の子がいて、その子と自然と仲良くなった。いや、気が合うし、話をしていても楽しいので、放課後など受験の話をしたり、数学の問題の解き方を教えてあげたりで、その子を含めたクラスの男女何人かのグループで一緒に過ごす時間が増えていった。そのうち、その子を異性として意識するようになり、それと同時に好きだとういう思いも募っていった感じだ。
10月の連休、おもいきって受験する高校の学校見学に誘ってみると、すんなり彼女はOKしてくれて、電車で20分ぐらいのところにある隣の市の高校に連れ立って出かけた。土曜日、僕と彼女の2人きりで出かけるというのを彼女に告げたとき、彼女はちょっと驚いた顔をして、一瞬僕を真顔でじっと見たが、すぐに嬉しそうに大きくうなずいて笑った。僕と彼女が2人きりで過ごすことは今まで一度もなかったのでたいそう驚いたのだろう。
日曜日は、彼女が受験する予定の高校と、僕が受験する高校の2つを見てまわった。駅から正反対の方向にあって、2つの高校を見て回るのにのべ2時間は歩いただろうか。僕達は歩きながらずっと一緒にいろんなことを話した。クラスの中の男子同士の人間関係で、女子には決して言わないこと、男子の世界の人間関係とか、女子に人気のあるA君が、実は性格が悪くて男子の中では浮いてることとかを話した。彼女も同じように女子の間の人間関係やグループの葛藤などを話した。僕らはとりとめもない秘密を暴露するたび、内緒ねと互いに言っては笑いあった。秘密の共有が彼女との距離を近づけてくれる気がして嬉しかった。
僕は彼女と2人きりで過ごしたのは後にも先にもこの一回だった。誘いたいとは思ったけど、彼女の心にさらに一歩深く踏み込むような感じがしたし、それだけに断られたらどうしようという不安も大きくて、また2人でどこかに出かけようとは言えなかった。そんな臆病風を吹かしているくらいだったから、当然好きだという告白もしなかった。
ただ、僕と彼女の家は500mぐらいの距離で、通りに面した彼女の家の前を通りかかることはあった。彼女の部屋は家の2階で通りおから見上げることができた。
僕は学校帰りに少し遠回りをして彼女の家の通りを通って帰った。彼女の部屋の下を通るとき、小さな小石を彼女の部屋の窓にコツンと投げたりした。彼女が帰っているときは、窓を開け顔を出してにこっと笑い、手を振った。僕も照れくさくなりながら、彼女に手を振って家路についた。ジェームズ・ディーンの出演する映画で、ジェームズ・ディーンが女の子の家の窓に小石をぶつけて、彼女を外に呼び出すシーンがある。彼女がそのシーンが好きだというので、あるとき学校帰りに真似をして小石をぶつけたら、彼女がとても喜んで、家の前を通るときはいつもやってねと言ってきたのだった。
僕は告白なんてできなかったから、これが僕にできる最高の愛情表現だった。彼女は僕が遠回りしていることは知っていたから、僕の「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」は彼女に伝わっていたと思いたい。
彼女の部屋の窓に小石をぶつける遊びは3学期が始まってすぐにやめてしまった。特に理由はない。北風があまりに冷たくて一刻も早く家に帰りたいのと、買い食い禁止の規則を破って学校帰りに買って食べるアンマンがとてもおいしいからだった。アンマンを買うコンビニをめざすと彼女の家はかなり遠くなってしまうのだ。
高校進学と同時に、彼女と過ごす時間は一切なくなってしまった。高校の入学までの春休みのある日、勇気を振り絞って彼女の家の前までいき、部屋の窓に小石をぶつけた。彼女は留守らしく窓は開かなかった。それが彼女への最後の「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」だった。僕はその後、彼女の家の窓に小石を投げることはなかった。
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DREAMS COME TRUE/ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜わたしたちの未来予想図〜